Power BIの差別化要素10 -SaaS型BIソリューション

Power BIの差別化要素の最終回は、SaaS型BIソリューションになります。SaaSとは、Software as a Serviceの略で、インターネット経由でサービスとして提供・利用する形態のことを言います。分かりやすい例でいえば、NetflixやHulu等のオンラインストリーミングサービス、Microsoft 365(Officeアプリ等)といった月額サブスクリプション形態で利用するサービス等が挙げられます。

  •  ツール費用(無料)
  • モデリング機能(データモデル、複合モデル)
  • ETL機能( Power Queryによるステップ記録機能で完全自動化)
  • Excelで分析」機能
  • 時系列操作関数の扱いやすさ
  • 関数言語(Excelから継承した関数の数々)及びクエリ言語
  • 計算エンジン(SSAS Tabularモデルをベースとした強力な分析エンジン)
  • Microsoftの他のサービスとの連携
  • 1つのテクノロジー(BIとしてのExcel
  • SaaS型BIソリューション

SaaSの特徴

Power BIのSaaSを話す前に、SaaSの特徴について見てみます。

  • クラウド上(インターネット上)にデータを保存可能
  • バイススマートデバイスやPC等)を選ばずにデータへアクセス可能
  • 複数の人がデータを共有できる
  • 月額単位の少額料金で利用可能
  • サービス水準は常に高い状態で維持される

クラウドがインターネットに接続することが前提のサービスであり、不特定多数のユーザーを対象とすることから、利用者にとって製品(サービス)を利用するのに一括で料金を支払う必要がないため、お財布にやさしいサービスと言えます。

MicrosoftがOfficeのパッケージ販売からサブスク型(SaaS)の販売スタイルに変わったこと(前回記事参照)が多きな変化の1つであったが、これも顧客満足度を高めるものであると同時に、現在主流のSaaS型ビジネスへの対応、しいてはMicrosoftクラウドソリューションであるAzureとのシナジーを高めるためのものと考えられています。

marshal115.hatenablog.com

なお、SaaS型ビジネスはユーザーにとってメリットの高いものですが、サービスプロバイダーにとってもメリットが高く、主に以下のものが考えられます。

  1. 月額ベースのリーズナブルな価格となったため、新規顧客を増やしやすい
  2. 顧客の囲い込みが成功した場合、安定的な収益が見込めるようになり、ビジネスプランを立てやすい
  3. 解約率を最小にするため、サービスや製品の改善を常に行うようになり、顧客満足度の最大化が経営課題の1つになってくる
  4. 顧客がフィードバックしやすい環境となったことで、顧客からの情報取得頻度が高まり、フィードバックの結果を自社製品・サービスに活かすことで競争優位の強化に繋げられる

一方、ユーザーにとってメリットしかないように思えるSaaSですが、実は2つの大きなデメリットがあります。それは、ユーザーがSaaSに完全に依存した場合、

  1. SaaSベンダーが価格改定を行った場合、乗り換え費用が非常に高くなってしまう可能性がある
  2. クラウドベースのサービスであるため、通信トラブルやベンダー側のサービスがダウンした場合、大きな痛手を負ってしまう可能性がある

ということです。

ただし、MicrosoftのOffice製品についてはSaaS型とはいえ、ソフトをローカルPCにインストールして使用することになるので、上述の影響は殆どないのですが、Power BI Serviceのように、クラウドベースで利用する場合、クラウドコンピューターのサーバーダウン等によりレポートが共有できなかったりするリスクが生じてしまいます。

Power BI Service

「Power BIの差別化要素1」にて紹介しました通り、Power BI ServiceはSaaS型サービスとなります。

marshal115.hatenablog.com

料金体系が非常に魅力的であるのが最大のメリットですが、他のBIベンダーが提供できないような機能を提供していることも、通常ユーザーや開発者両方のニーズを漏れなく満たすことが出来ている状況となっています。

Power BIは無料と有料版の2つがありますが、無料についてはPower BI Serviceのアカウント(Microsoftのアカウント)を持っていれば誰でも作ることは可能です。有料版(Power BI Pro)は月額1,199円/アカウントで作ることができますが、無料版では対応していないようなサービスを利用することができます(下図)。

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上記記事に詳細に記載していますが、有料版ではPower BI ProのほかにPower BI Premium(ユーザーごとのPremium Per User(PPU)とキャパシティ(容量)単位)があり、Proから更に強化された機能(AI機能等)を使用できるようになります。

powerbi.microsoft.com

PPUまでであれば、Proと一緒に使用することで総額月額2,387円/アカウント(Pro + Premium両方を含む金額)となります。

Power BI Serviceの機能

Power BI Service(Pro)はWebブラウザを通じて利用するサービスであるため、機能が多くあり、ここで全て紹介しきれないのですが、上図(Power BI Free vs Proの違い)で紹介されている中にある機能だけでもそれなりに便利なものが多い。

個人的に良く使用するものとして、以下の3つがあります。

  • レポートのWebへの発行
    BIレポートを誰とでも共有できるようになる
  • Appsの使用
    異なる用途のBIレポートをひとまとめにして、タブで切替して見ることが可能
  • Excelで分析
    以前の記事を参照

これらの機能を使用する前提として、Power BI Desktopでダッシュボード(レポート)を作成し、それをPower BI Serviceへ発行する必要があります。

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Power BI Serviceへ発行されたデータはそれぞれ「レポート」と「データセット」に分けられ、前者は上図のようなビジュアルを伴ったレポート、後者はこのビジュアルを作るためのデータセット(定義済データモデル)となります(下図)。

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レポートとデータセットを分ける理由は、Power BI Serviceの概念が「共有」することを目的として存在するためです。例えば同じ会社の他のユーザー(B君)がA君の発行したレポートのビジュアル(チャート等)を使用しないで、自分でこのレポートの基となるデータセットにPower BIで接続したり、あるいはWebブラウザ上でこのデータセットを使ってレポートを構築したいとした場合、データセットは独立して存在したほうが都合が良いわけです。また、C君がExcelからこのデータセットにアクセスして、PivotテーブルをExcel上に作りたい場合もデータセットにアクセスするだけで可能になります(「Excelで分析」機能)。

モバイルBI

クラウドに発行されたPower BI Desktopで構築されたレポートは、デバイスを問わずアクセスできるようになります。BIレポートの内容をしっかり分析する場合や会議で使用する場合等はPCベースが良いですが、外出先や軽く確認したいといった場合にはスマホでBIレポートを確認できると便利です。

そこで登場したのが、モバイルBIという概念です。これはPower BI Desktopでモデリング、可視化を行う一方、ユーザーがスマホで見た場合にレイアウトをモバイル向けに変更するよう、予めPower BI Desktopで作っておくことものです(下図)。

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モバイル用にビジュアルを配置するのは非常に簡単で、既に作成したチャートや表等をモバイル版レイアウトの適切な場所に配置するだけでよく、サイズ等を整えて完成させます。モバイル版として閲覧するには専用アプリが必要ですが、ちょっとした数字の確認に際して重宝します。

余談ですが、BIレポートを利用する目的はしっかり分析を行うこと、業績確認等がメインとなるため、PCを使って数値確認を行うケースが多く、モバイルでの利用率はさほど高くないのが現状です。これは、BIサーベイを毎年実施しているBARC*1の「BIトレンドの重要性ランキング」にも結果として出ており、モバイルBIが直近2021年では計20項目中、15位となっているのが確認できるかと思います(下図)。

■ BIトレンドの重要性ランキング(調査サンプル数: 約2,300人)
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背景には、BIの活用はグローバル市場で最も伸びている業界であるものの、実際にはデータ管理やデータ・ドリブン文化、セルフサービスBI等の分野が最も重要と考えられており、モバイルBIは重要ではあるものの、ランキングとしては高くないようです。ない、モバイルBIを利用するためにはやはりPower BI Serviceが必要であり、SaaS型としてBIソリューションの1つとして考えることができます。

まとめ

  • Saas型ビジネスモデルは現在主流であり、Power BIでも同じトレンドである
  • Power BI Service(クラウド)を利用して、レポートの共有やその他機能を使用していくことになるが、キーワードは「共有」
  • Power BI Serviceに発行されたPower BI Desktopファイル(BIレポート)は「レポート」と「データセット」の2つに分けられ、再利用という観点から「データセット」の概念を理解しておく必要がある
  • Power BI Serviceに発行されたBIレポートはモバイルBIとしても活用できるが、利用頻度はそれほど高くない

*1:Business Application Research Center