Microsoft BIの習得期間について

これから新しくPower BIやExcel Power Pivotを学ぼうとしている人、あるいは既に学んでいる人向けに、ある程度これらのテクノロジーを使いこなせるようになるための必要期間やそのための条件等を紹介したいと思います。結論から言うと、様々な環境や条件はあるものの、ある程度使えるようになるまでの習得期間はおよそ3~12ヵ月程度になる可能性が高いと思います。今回の内容は私個人の実体験はもとより、多くの企業向けにPower BIによるBI構築を行ってきた経験に基づくものとなります。

マーケット統計

今回のテーマは「個人がMicrosoftのBIテクノロジーをある程度使えるようになるまでに必要な期間」ですが、具体的な話に入る前にまずは「企業がBI導入に際して、製品購入からロールアウト(運用開始)するまでに必要な期間」について紹介したいと思います。個人と企業は違いますが、関連するテーマになりますので、下図をご覧下さい。

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このサーベイ結果はBI(ビジネス・インテリジェンス)のマーケット調査機関であるBARC*1による「The BI & Analytics Survey 22」の調査結果で、これによると企業がBIの製品購入からロールアウトまでに必要な期間の中央値は3.8ヵ月であったことになります。

企業によるBI導入とロールアウトに関する話ですので、Power BI等を学ぶのに必要な期間と直接的な関係はありませんが、実際に私が担当した某クライアントの担当者はPower BIを全く触ったことがないにも関わらず、3ヵ月でPower BIテクノロジー(Power QueryやDAX等)をほぼ使いこなせるようになり、BI構築も成功させています。BIの導入期間とほぼイコールであったことから、一つの参考になるのではないかと思います。

Power BIかExcel

セルフサービスBI(SSBI)*2としてスタートした場合、Excel BI(Power Pivot)とPower BIのどちらか、もしくは両方を学ぶことになりますが、どちらからスタートした方が良いのでしょうか?これに対する答えは、

自分のニーズ次第 -It depends!

になります。つまり、Excelが得意な人はPower Pivotからスタートすると身近なニーズに直ぐに応えられるでしょうから、あえてPower BIからスタートする必要はないですし、Excelは得意ではないけど、高度な分析のニーズがあるがゆえにPower BIからスタートした、というケースもあると思います。

重要なのは、Excel Power Pivotであっても、Power BIであっても、どちらも技術的な部分はほぼ一緒であるため、コア・コンセプトを片方で習得できれば、もう片方も自動的に習得できていることにあります。非常に効率が良いわけですが、おすすめは両方を得意になっておくこと、そしてその違いについて把握し、使い分けが出来る様になっておくと様々な場面で応用が利きます。

ただし、学ぶ領域に関してはPower PivotよりもPower BIのほうが圧倒的に多いことに注意が必要です。理由としてPower BIは常に定期的に新しい機能が追加されており、Power BI Service(Power BIのクラウド版サービス)についてもある程度の理解が必要であること、他のサービスとの連携が必要な時もあり、学習コンテンツが増てしまうこと、等が挙げられます。

一方、アナリティクスという目線で見れば、Excel Power Pivotは通常のPivotでデータ分析をしてきたことをほぼ全て代替できる上、フィルターコンテキスト*3を自在にコントロールできることから、Pivotでは無理なことを実現することも可能になります。

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上図はBIテクノロジーを用いなかった場合の分析のやり方(左側)と用いた場合(右側)の比較ですが、両方を経験したことがある人であれば、あらゆる面で全く違うと断言できるはずです。BIテクノロジーを活用できた場合、ETL(データの抽出と変換)はPower Queryで最適化できるだけでなく、在庫と売上を紐付けて1つのPivotで見ることも可能となり、分析の幅が広がるだけでなく、インメモリ・データベースであるデータモデル(Power Pivot)を使うことでExcelのワークシートにデータを読み込ませることなく、データを圧縮した状態で高速に計算結果を表示させることが可能になります。

一方、Power BIはExcel Power Pivotを更に強化したBIツールであり、SSBIとエンタープライズBI*4の両方をカバーできるようになります。

習得の時間軸に対する概算

ようやく時間軸について細かく見ていくことになりますが、最初に断っておきたいことがあります。それは、上述の通り、様々な制約条件があるため、ここに書いている内容は本当にIt depends(ケースバイケース)ということです。シンプルな回答を求めるのであればこの一言で終わりですが、異なる条件における一般的な回答が知りたい人は、下記各種条件ごとにもう少し深堀したものをご参考下さい。

  • 能力によって異なる
    • 賢い人はPower Queryについて数週間で使えるようになり、Power BIは約3ヶ月で使えるようになったケースがあります。ただし、前提条件として、ほぼ毎日何かしらBIに関すること(例:Power Queryを書く、DAXを記述する等)をやっていることが必須となります
    • 自分に甘い人は数年経っても上達しない。これは当たり前ですが、能力があっても目標がないとなかなか上達しないものです。

  • 自分のキャリア(経験)によって異なる
    • IT担当(ソフトウェア開発者等)
      • Power QueryやDAXについて、SQLを知っている人は非常に入りやすいと思います
      • プログラミングが出来る人が殆どだと思いますので、これもプラス要素となります
      • IT出身の方であれば早い人で3ヶ月もあればかなりレベルの高いことを実現出来るようになります。ただし、基本をしっかり理解して、最短ルートでベストプラクティスを学ぶ必要がありますので、必要な時に適切なアドバイスが貰えることが条件です

    • アナリスト(財務・ビジネス等)
      • データ処理、Pivotテーブルを日頃使用している人は入門しやすい。このような人にとって、まずPower Queryは目から鱗になる可能性が非常に高いと思います
      • 経理等、業務の繁忙期が決まっているような人には業務改善等の研究対象として最適なテクノロジーとなります
      • 私のようにレポート作成を行う必要がある場合、Microsoft BIを避ける方が難しい選択肢でした。そして、アナリストとして毎日学び続けた結果、約1ヶ月でPower Queryの基礎が身に付き、DAXについては自信を持つまでに6ヶ月〜1年程度必要でした

    • ビジネスユーザー(現場ユーザーや経営企画等)
      • ITに興味がある人は、使い方をマスターするところからスタートして、そのうちアナリストと同じような仕事をすることになる可能性も高いと思います
      • ビジネスに興味がある人は共有レポートを好きな切り口で見れるように触っていくと、自分で更に研究してみたくなるかもしれません
      • 感覚論でしかないですが、プログラミングに対する知識がまったくない状態の人が対象となる場合、アナリストの倍以上の時間(すなわち、Power Queryは6ヶ月〜DAXは12ヶ月〜)は必要と考えます
      • 例外として、Excelが非常に得意な人であれば、アナリストと同じ速度で習得できる可能性はあります

  • その他
    • 凡ゆることに共通しますが、好奇心があり、かつ、行動に移せる人ほど、上達しやすくなります
    • 目的がはっきりしており、常に自分のやっていることに質問できる姿勢を持てる人は学ぶスピードが速くなるでしょう
    • 学びの場を広げ、自ら勉強会やセミナーに参加している人はSNS等から貴重な情報を入手できる可能性が高い

まとめ

かなり主観的な意見が多く入っていますが、これといって絶対的な指標はないので、参考程度にして頂ければと思います。結論として、最終的にはMicrosoft BIに対して自分が納得できるレベルに達するまでに恐らく1年は必要と考えた方が良いかもしれません。即効性を求める人には絶望的な話ですが、これが現実です。ただし、これも自分がどこまで妥協できるか次第ですので、例えば単純にPivotと同じような使い方で構わない、あるいは社内のデータベース環境が整っており、データを変換することがほぼないといった場合、学ぶ領域も少なくなりますので、やはりケースバイケースとなるわけです。

なお、BIテクノロジーは日々進化しており、基礎だけを学んで安心していても中長期的にはマイナスに働くかもしれません。英語で

If you don't use it, you lose it

という表現がある通り、「使わなければ(そのスキル等を)失ってしまう」ことになりますので、日々ブラッシュアップをしていくことが重要となります。最後は少し話が逸れましたが、今回の話が少しでも参考になれば幸いです。

*1:Business Application Research Center

*2:ビジネスユーザーがIT部門の負担を最小化し、自分たちでデータを抽出・変換し、BIソリューションを実現するBI

*3:データポイントを形成するためのフィルター条件。通常のPivotでは行と列、スライサー等の条件で結果が算出されるが、データモデル及びDAX言語の組み合わせで更に複雑な条件設定が可能

*4:IT部門が主導するBIのことを指し、SSBIが登場するまではエンタープライズBIが主流であった