2022年10月18日から3日連続開催のJapan Power Platform 2022(JPPC 2022)が無事終了しました。BIコーナーで初司会でしたが、周りの皆さんからサポートも頂き、何とか最後まで完走できました。
powerplatformconf.connpass.com
当該イベントは完全にコミュニティ主導ではなく、私も含めMicrosoftのPower Platform関連に従事する内部の人がMicrosoft Ignite 2022で発表された最新でエキサイティングなニュースを日本市場向けに分かりやすく伝える機会、そして日本や世界で活躍されているPower Platformを愛する方々の情熱が籠ったプレゼンテーションの数々でした。
内部の人だけでは到底成し遂げられない素晴らしいイベントであったことに改めて感謝の意を表したいと思います。
私のブログはPower BI関連のテクノロジーを紹介するものとなりますので、BIの各セッションでの見所をまとめてみました。今後、視聴URL(改めて共有予定)が完成した際(こちらは改めて共有予定)の参考としてみてください。
※ 記事の一番下にGuy in a Cubeからのメッセージあり
- Session BI1
- Session BI2
- Session BI3
- Session BI4
- Session BI5
- Session BI6
- Session BI7
- Session BI8
- Session BI9
- 最後に
Session BI1
トップバッターとなるコミュニティ常連の須藤さんによるPower BIのレポート運用に関するプレゼン。日頃大量のデータと向き合っている方で、Power BIだけでなく、大量データの分析を可能にするAzure Synapse Analytics(ASA)も活用されており、ご自身がPower BIレポートの開発・管理を行う立場であるが故に、レポート(外部では一般的にダッシュボード)の効率な構築、運用、社内への規模的な展開等を考慮する必要があるため、様々なアイデアを共有してくれました。
初日のトップバッターであるにも関わらず、BIセクションでは最も多いフィードバックを頂いており、Power BIのレポート開発に対するニーズが強いことが伺えました。
須藤さんのプレゼンに対するコメントとして、
- Power BIを個人から組織に移行する際の話が聞けて良かった
- わかりやすく、内容実用的で非常によかった
- 初めて知る運用の方法があって大変有益でした
といったコメントが目立ち、Power BIを組織レベルで運用している方、あるいはこれから組織的に運用をしていきたい方向けに非常にお勧めです。
Session BI2
お次はMicrosoft社員である柏木さんによるユニコーン企業の分布に関する可視化のデモです。外部のデータソースを使用しており、散布図やマップビジュアル、Power BIサービスへ発行して、更にそれを一般共有できるよう、「Webに公開(パブリック)」機能を使用して一通り、Power BIを使用した際の醍醐味について紹介してくれました。
- データ集計
- レポート構築
- Power BIサービスへの発行
- 外部との共有
といった基礎的なことが知りたい方はぜひ上記ブログを覗いてみてください。
柏木さんのプレゼンに対するコメントとして、
- 具体的な例で解説してくれたことが良かった
- 使用しようとしていたマップビジュアルについて聞けて良かった
- Power BIがExcelからデータを取得して変換ステップを記録している部分が参考になった
といったコメントが目立ちました。Power BIは初心者で何をすれば良いかが分からない方はぜひ参考としてみてください。
なお、柏木さんはMicrosoftの技術営業として日頃活動しており、お客さんにPower BIの魅力を伝える際に製品単体だけでなく、Microsoftが持つ他のデータプロダクトとのシナジーによって総合的にPower BIを使用したほうがお客さんにとってメリットが高いことを提案しています。
Session BI3
Power BI MVPの石川さんによるプレゼンとなります。石川さんは「データカルチャとPower BI」について、
- ハイレベルなデータカルチャという視点
- エンタープライズグレードのBI導入について
- ご自身の学習用リソースのまとめ
といった部分で話をして頂きました。
Power BIのコミュニティでは常連となりますが、Power BI MVPの清水さんと一緒に、Power BI Weekly NewsというYouTubeチャネルに毎週登場しており、当該チャネルではPower BIに関する最新のニュース、石川さんの小ネタ(Tips)等を解説してくれています。
石川さんのプレゼンに対するコメントとして、
- データカルチャについて、社内で浸透するための知識を学べてよかったです
- 基本的なところから、とても大切な話を聞かせていただきました
- 石川さんの経験を聴くことができ、とても参考になりました
といった、基礎・基本・経験といった感想が多くありました。
Session BI4
スペイン在住のBernat氏による「Power BIでデータ検証」セッションとなります。Bernat氏は日本に留学していたこともあり、日本語ペラペラでプレゼンも日本語で対応して頂きました。Power BIの世界でCALCULATION GROUPS(計算グループ)について最も詳しい1人と言える方でしょう。
彼のデモはPower Queryから始まり、DAX、Tabular EditorからC#スクリプト等、高度なものが殆どでしたが、マスターすれば強力な武器となり得るTipsが盛り沢山でした。
上記は彼のブログですが、1つ1つのコンテンツが非常に丁寧に解説されています。SQLBIのブログもそうですが、他人にとって難解なコンテンツを詳細に解説してくれるブログは往々にして長編ブログとなってしまう傾向があるようです。
Bernat氏のプレゼンに対するコメントですが、
- 知らない世界の内容でしたが、大変勉強になった
- C#は可能性を見ました。活用の機会があれば試します
- 難しいテクニックばかりで、自分では無理だということを認識。データがいい加減だとPower BIはすぐにエラーになるため、環境整備は必須だと思いました
といったものが多く占めました。Power BIを日頃触っている玄人でもここまでディープダイブすることはあまりないため、レベルの高さを実感させられたセッションでした。
Session BI5
Kagataさんによる「Power BI 101(学び始めた時に知っておくと良いこと)」となります。知っている人は知っていますが、日本でPower BIについて最も知っているであろう「神様」と呼ばれているお方です。
プレゼンの前半20分間はPower BIに対する秘めたる熱い想いを語って頂き、Power BI Desktopだけ勉強するのではなく、Power BIサービスもしっかり学習し、組織内における”共有”を意識した使い方を目指していくべき、というメッセージでした。
「手を動かす」、「失敗しても良いのでとにかく触ってみる(頑張ってみる)」というスタンスで私も今まで数多くのことを学ばさせて頂きました。
Kagataさんのプレゼンに対するコメントとして、
- Power BI Desktopとサービスを分けて考えるのは間違いということが響いた
- Kagataさんが神と呼ばれる理由を垣間見た感じがした
- データセットとレポートとアプリの関係の理解が深まり、熱いトークありがとうございました
といった感想が目立ちました。
KagataさんはPower BI関連の勉強会を定期開催しており、下記Power BI勉強会からぜひご自身が学んだことを発表して”神のアドバイス”を得てみてはいかがでしょうか?
ちなみに、発表に際してどんなに初歩的な内容でも良く、大事なのは”自分自身でやってみた→結果上手くいかなかった or うまくいった”と振り返ることです。その結果を周りと共有してより良いやり方を学べたりするので、ここでしか得られない経験は豊富にあります。
Session BI6
Power BI CATであるChris Webb(私の直属の上司)によるプレゼンで、「BI with Excel -but not Power BI」という面白い内容でした。
- パラメータ化されたテーブル
- Power Queryの「データ型の作成」を使ったExcelフォームの入力
- Power Automate DesktopやPower Automateを使用して、レポートの自動生成
- ExcelオンラインでのPivotテーブルの使用感
等についてデモをしてもらいました。同じ内容がトロントのPBIユーザー会で紹介されており、英語がOKな方は先にこちらを視聴しておけば問題ないでしょう。
ChrisさんはPower BIの世界で最も有名な人物の一人で、特にPower QueryやAnalysis Services関連で多くのブログ(20年に渡って)を執筆しており、パフォーマンスチューニング、クエリのディープダイブ、Power BIに関する最新テクノロジーのTips等を紹介してくれるブログは検索エンジンで殆ど行き着く先になる程です。そして、何を隠そう、私がBIの世界へ入るきっかけを与えてくれた人でもあり、上司であると同時に恩師でもある方です。
Chrisさんのプレゼンに対するコメントとして、
- Excelが立派なBIツールだということがわかった
- 様々なデモを通してExcelも進化していることを知りました
- PowerAutomateと組み合わせて自動化するアイデアもとても面白かった
- ExcelでのBIレポート事例よく理解できました
等がありました。時々「脱Excel」といった表現で注目を集めようとする記事がありますが、「脱Excel」ではなく、「With Excel」というのが正しい表現となります(ただし、Power BIと一緒に使う場合に限る)。Excel自体がBIツール(Power BIの前身であるPower Pivotを搭載)であるとともに、適材適所(Excelに向いている作業 vs Power BIが得意とする内容)、そしてPower BIとExcelを一緒に使っていく事例はこの世の中に多く存在する、という考え方が何より大事であると思います。
Session BI7
櫻井さん・塚本さんの共同ペアによる「Power BIを使ったExcelレポートからの脱却奮闘記」に関する内容となります。実際にグローバル規模で展開している消費財メーカーの日本法人におけるPower BIの活用事例の紹介となりました。
- 社内に散在するExcelベースのレポートの数々
- Power BIの導入歴史
- IT部門によるPower BIの啓蒙活動
- 導入拡大に向けての工夫の数々
- IT部門だけでなく、研究開発部門や営業部門によるPower BIの活用
- それによるBeforeとAfterの成果
これらの紆余曲折ストーリーを解説して頂きました。実は櫻井さんの会社でCoE*1として所属されていた方が、私が所属するPower BI CAT(Customer Advisory Team)のメンバーとして活躍するようになったこともあり、CoEに関するベストプラクティスを来月にも共有して頂く予定です。
CoEはPower BIのみならず、データカルチャを実現する上でベストプラクティスを提供する重要な役割を担っているため、各企業で導入を検討する価値があると言えます。
こちらのセッションでのコメントとして、
- データを持っている部門に使ってもらうというのは当たり前であるが、非常に悩ましい部分でもあることを共感しました
- BIツールに対する理解が重要であり、運用チームの苦労がわかりました
- EecelからPower BIの発展状況はとても共感できた
- 社内でBIを普及させるためのコツを知ることができ、とても勉強になりました
等、参考になったという感想が多く見受けられました。自社で展開するアイデアの1つとして、他社事例を参考にすることはいつの時代になっても変わらないもの、そしてPower BIをより使いこなしていけると更に付加価値の高い業務を行うことも実現できると感じました。
Session BI8
以前BI合宿を行った際に知り合った鈴木さんによる「データドリブンBIのすすめ~BI活用を楽に進めていくためのメソッド~」のセッションです。今回、BI登壇者の中で恐らく最もスライド内の文字が多いプレゼンでしたが、一字一句がデータ活用、BI導入時のヒントとして、スライドを読むだけで作成者の熱く秘めたる思いが伝わってくる大作となっています。そしてBIの概念、テクニカルな部分も含め、実際にエンドユーザーに日頃接しているだけあって、細かい部分にまで説明がなされています。
BIに慣れている方であれば頷くことが沢山あり、BIはこれからという方でも何度も読み返して頂き、ある日を境に急に理解が進むことは間違いないでしょう。
鈴木さんのセッションに対するコメントは
- データモデルの作成方法などがよくわかりました
- とても本質的な内容でよかったです。とくに「分析要望に全方位的に打ち返し可能な分析データモデル」というのが響きました
- 意思決定ファースト、大事ですね
- 実際のPower BI開発経験に基づく貴重なお話を伺うことができ、大変参考になりました
等、名フレーズの数々は私もどこかで使わせて頂こうかと思うくらいでした。BIを日頃構築していくと、どうしてもテクノロジーファーストになってしまいがちですが、意思決定という条件がある限り、常にそれが最優先されるべき=アクションという目的があってこそのBI構築、というのが正しいパスであると思います。
なお、ここでの意思決定は何も経営レベルの意思決定に限定するものではなく、ご自身の業務に落とし込んで考えた場合、
- BIのETL機能*2でデータ処理を早く終わらせて残業をしない
- 余った時間で分析作業にフォーカスする
- 綺麗なレポートを作ることでそのレポート自体を外部提出用資料として使用する
等、細かいレベルまで落とし込んで考えることも可能です。大事なのはやはり目的であり、それに対する意思決定を行うためのツールとしてBIを活用していく、という考え方がスムーズでしょう。
Session BI9
最後のセッションは私の元同僚であり、現役アナリストである商(しょう)さんによる「現役アナリストによるPower BIの事例紹介」となります。コミュニティでは初登壇にも関わらず、分かりやすいスライドとデモを混ぜながら、アナリストとして着目すべきビジネスロジックに対する解説、並びにPower BIでそれを解決するためのロジック(DAX式)、ExcelとPower BIの使い分け、Power BIユーザーが心がけるべきベストプラクティス等、バラエティーに富んだコンテンツでした。
私は前職で一緒でしたので、彼が実際に作っていたモデルや考え方、在庫アナリストとして活躍するためのスキル習得等、分かってはいましたが、改めてPower BIがターゲットゾーンの1つとしいるのが彼のようなパワーユーザーであり、会社の中でこのような人を1人でも抱えておくとその会社にとって非常にメリットが高いと感じました。
エンドユーザーは何人いても構わないが、パワーユーザー(Power BIチャンピオン)を抱えておくことは企業にとっては良い人的投資の1つであると思います。
商さんのプレゼンに対するコメントとして、
- 現役アナリストの結果重視した、技術と効率性を追求した内容が伺えて、とても参考になりました
- すごく専門な知識と実例を勉強させていただきました。わかりやすくて、ありがとうございました
- すべてPower BIではなく、目的と状況に応じてEecelと使い分けをしたいと思います
等、専門性や実例、ExcelとPower BIの使い分けに対するコメントが数多くありました。思えば私もアナリスト時代の2019年に同じような発表をしており、当時のまとめは下記ブログになっています。
最後に
以上がJPPC 2022で登壇されたBIセクションの全ての方の概要解説となります。Power BIはデータを扱う全ての人向けに、より使いやすく日々進化を続けており、来年のこの時期には更に大きな出来事が待っているでしょう。
最後にGuy in a Cubeから日本のPower Platform向けのメッセージを共有しておきます(最後のIgnite Recapセッションと同じもの)。
Yooooooo!